■ファレイ分数(その1)

【1】フォードの円列

 フォードの円列と直線との接点は常に有理数であり,区間[0,1]のすべての有理数はフォードの円列とx軸との接点として得られる.

 たとえば,x^2+(y−1/2)^2=(1/2)^2と(x−1)^2+(y−1/2)^2=(1/2)^2によって表されるような2円から始め,隣接する2項p/qとr/sの間に中間分数

  (p+r)/(q+s)

を挿入すると,ファレイ数列

[0/1,1/1]

→[0/1,1/2,1/1](2位のファレイ数列)

→[0/1,1/3,1/2,2/3,1/1](3位のファレイ数列)

→[0/1,1/4,1/3,2/5,1/2,3/5,2/3,3/4,1/1](5位のファレイ数列)

→[0/1,1/5,1/4,2/7,1/3,3/8,2/5,3/7,1/2,4/7,3/5,5/8,2/3,5/7,3/4,4/5,1/1](8位のファレイ数列)

が得られる.

 n位のファレイ数列とは分子と分母がnを超えない既約な正の有理数全体を大きさの順に並べたものである.たとえば,位数4のファレイ数列は

  [・・・,0/1,1/4,1/3,1/2,2/3,3/4,1/1,・・・]

位数6のファレイ数列は

  [・・・,0/1,1/6,1/5,1/4,1/3,2/5,1/2,3/5,2/3,3/4,4/5,5/6,1/1,・・・]

位数7のファレイ数列は

  [・・・,0/1,1/7,1/6,1/5,1/4,2/7,1/3,2/5,3/7,1/2,4/7,3/5,2/3,5/7,3/4,4/5,5/6,6/7,1/1,・・・]

 位数nのファレイ数列の長さは,オイラー関数φ(n)を用いて,

  1+φ(1)+φ(2)+・・・+φ(n−1)+φ(n)

 〜3(n/π)^2〜0.30396n^2

になる.この近似はnが大きくなるにつれてよくなっていく.

 0と1の間にある既約分数で分母かnを越えない分数というだけでなく,わざわざ分子まで入れてある理由は,ファレイ数列を拡張させるためである.たとえば,位数5のファレイ数列は

  [0/1,1/4,1/3,2/5,1/2,3/5,2/3,3/4,1/1,5/4,4/3,3/2,5/3,2/1,5/2,3/1,4/1,5/1]

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【2】ファレイ数列とディオファントス近似

 ファレイ数列では相隣り合う2項[m1/n1,m2/n2]の分母と分子からなる行列式の値m1n2−m2n1は±1である.すなわち,交差積m1n2とm2n1は連続する整数になる.

 また,フォードの円列では(m1/n1,1/2n1^2)を中心とする半径1/2n1^2の円と(m2/n2,1/2n2^2)を中心とする半径1/2n2^2の円が接することになる.フォードの円列は重なり合うことはなく,この2つの円の間に入る一番大きな円はその中間分数(m1+m2)/(n1+n2)の円である.

 フォードの円列において,直線y=1は∞=1/0に対応すると解釈しよう.すると,有理数p/qに対応するフォードの円は半径1/2q^2で,x軸上の点p/qにおいて接する円となる.

 同様に分母が高々dの有理数からなる位数dのファレイ数列の各項は1/d^2≦y<1/(d+1)^2の任意の水平線と交わるフォードの円と対応することになる.

 これにより,いくつかのディオファントス近似に関する定理は,(双曲)幾何学的に自明なものとなる.たとえば,任意の無理数αに対して

  |α−p/q|<1/2q^2

を満たすものが無数に存在するという定理がそうである.直線x=αが連接する2つのフォードの円p/q,r/sのどちらか一方に交わる.それがp/qであるとすると|α−p/q|<1/2q^2が成り立たなければならないからである.

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