■デュボア・レイモンの定数(その3)

デュボア・レイモンは動物電気生理学のパイオニアの一人エミール・デュボア・レイモンのことであろう。私は学生の頃 、デュボア/デュボアの心電図学を読んで大変勉強になったことを思い出す。300-150-100-75-60-50といってもいまの医学生には通じないかもしれないが・・・

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 ここでは,

  Cm=∫(0,∞)|d/dt(sint/t)^m|dt−1

を考える.

  C2=(e^2−7)/2=0.1945280・・・  (デュボア・レイモンの定数)

まずはm=1から

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【1】シンク関数の微分

  d/dx(sinx/x)=cosx/x^2・(x−tanx)

 ここで,g(x)=x−tanxとおくと,

  g’(x)=1−(secx)^2≦0

よって,(0,π/2]でシンク関数は減少関数である.

  sinx/x≧sin(π/2)/(π/2)=2/π

  sinx/x≧2/π   (ジョルダンの不等式)まずはm=1から

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【2】シンク関数の積分

 正弦積分とは,

  Si(x)=∫(0,t)sint/tdt

       =x−x^3/3・3!+x^5/5・5!−・・・

として定義される特殊関数(初等関数によって表し得ない関数)である.また,その特殊値

  Si(∞)=∫(0,∞)sint/tdt=π/2

は,ディリクレ積分と呼ばれる.

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[補]

 シンク関数は

  sinx/x=Σ(-1)^mx^2m/(2m+1)!

        =1−1/3!x^2 +1/5!x^4 −・・・

        =1−1/6x^2+1/120x^4−・・・

とベキ級数表示することが可能です.

 さらに,シンク関数

  sinx/x=0

の解が±π,±2π,±3π,±4π,・・・となることを利用して,無限積表示すると

  sinx/x=(1-x^2/π^2)(1-x^2/4π^2)(1-x^2/9π^2)(1-x^2/16π^2)・・・

     =Π(1-x^2/k^2π^2)

 ここで,

  sinx/x=1-1/6x2+120x4-・・・  (ベキ級数表示)

  sinx/x=Π(1-x^2/k^2π^2)  (無限積表示)

     =1-1/π^2(Σ1/k^2)x^2+・・・

の両辺を比較することにより,

  Σ1/k^2=π^2/6,Σ1/k^4=π^4/90,・・・

が計算されます.

 Σ1/k^2はリーマンのゼータ関数ζ(2)に,Σ1/k^4はゼータ関数ζ(4)に相当します.すなわち,

  ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90,

以下,

  ζ(6)=π^6/945,ζ(8)=π^8/9450,・・・

と続きます.

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