■2^1000は10^302より大きいか? (その33)

 スターリングの公式は面白い公式で,たとえば,

  n!/n^n 〜 √(2πn)/e^n

  1/n・2/n・・・(n−1)/n・n/n 〜 √(2πn)/e^n

として,全体のn乗根をとればk/nの相乗平均が大まかに1/eに近いことがわかります.

 一方,図形近似する立場からは天地逆転

  n^n/n!

の方が使いやすいことがいえます.n^n/n!は1辺の長さnの立方体を切断した直角三角錐の体積になるからです.

不等式

  2(1/2)^n・(π/2n)^n≦n!/n^n≦2(1/2)^n

  1/2・(2/n)^n≦n!/n^n≦2(1/2)^n

  1/2・2^n≦n^n/n!≦1/2・(4n/π)^n

  1/2・2^n≦n^n/n!≦2・(n/2)^n

という体積不等式になります.その図形的意味は1辺の長さnの立方体を切断した直角三角錐の体積は2つの(半)球の中間になるという「球体による多面体近似」定理です.

 今回のコラムでは,これの双対と考えられる「多面体による球体近似」定理(ミンコフスキーの第2定理)

  2^n/n!≦vol(K)≦2^n

を紹介します.

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【1】ミンコフスキーの第2定理

 一般に中心対称な凸体(もっと一般的に0が重心であるような凸体)Kに対して,

  2^n/n!≦vol(K)≦2^n

はミンコフスキーの第2定理と呼ばれています.

 すなわち,Kの体積は1辺の長さ2の立方体とそれを切断した直角三角錐の体積の中間になるというものです.冒頭で紹介したように両者は数学的双子なのですが,それにしてもよく似ていると思いませんか?

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