■三虫問題と三体問題(その8)

三虫問題は重力下での三体問題とはいくつかの点で異なっている。

[1]第一に、重力下での三体問題はカオス的(運動を記述するには出発点の位置を正確に知る必要があるが)、三虫問題は規則的なので、その運動は簡単な規則を見つけて記述することができる

[2]第二に、三虫問題は自由度がはるかに少ない(時刻0でのアリの位置がわかっていればその後の軌跡がすべて決まってしまう)、それとは対照的に三体問題は初期位置だけでなく初速度を知る必要がある。

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三体問題の簡単な場合、

三体のうち、一体がほかの二体に比べて極端に軽い場合、制限三体問題と呼ばれる。小惑星の重力が太陽と木星に与える影響を無視することができるので、数学的な処理が簡単になるのである

三体が太陽と木星と小惑星であるとみなすと、一番軽い小惑星がラグランジュ点にある場合である。小惑星のラグランジュ点は木星の公転軌道面上にあり、太陽と木星とで、正三角形をなす点が2つと、太陽と木星を結ぶ直線状に3つ(太陽と木星と小惑星がそれぞれ、ほかの2つの間にある3つの場合, オイラーの直線解 )である。

物体の初期位置が正三角形に近い三角形になっているが、正三角形の状態に収束するという意味で安定である。初期位置が直線上のラグランジュ点に近い状態であれば、小惑星は遠く離れるように動くという意味で不安定である。

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三虫問題の簡単な場合、

アリの位置が正三角形をなしていれば軌跡は対数らせんを描いて正三角形の中心に収束していく

一直線上にいるならば、両端のアリはお互いを目指してまっすぐ進み、残りの1匹は目標のアリの方向に進み、ぶつかった後はくっついたままでそのアリと一緒に動く。

正三角形の方が不安定で、直線の方が安定になる→(その9)

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