■球充填の問題(その12)

【1】最大接吻数の下界

 格子状配置による最大接吻数の評価は,最終的にはグラフ的算法に帰着されるのですが,

  n  1  2  3  4  5  6  7  8  9

 接吻数 2  6  12  24  40  72  126  240  272

 格子  A1 A2 A3 D4 D5 E6 E7 E8

1≦n≦8では,ガウス記号を用いて

  下界=n([2^(n-2)/3]+n+1)

の形にまとめられます.

 この式はn>8に対しては成り立ちません.たとえば1〜8次元では最大接吻数は格子上で起きる(たとえば,5,6,7次元ではそれぞれ40,72,126)のですが,9次元では格子上での最大接吻数が272であるのに対して,不規則配置では306個の球が接触できるものが知られているのですから,9次元以上になるとルート格子だけでは済まなくなるのです.

 また,n=9のとき

  n([2^(n-2)/3]+n+1)=468となるのですが,コクセター・リーチの上界401よりも大きくなってしまうからです.

===================================

【2】最大接吻数の上界

 リーチは最大接吻数の上界を

  n  4  5  6  7  8  9  10  11  12

 上界  26  48  85  146 244 401 648 1035 1637

と計算しています.τ8=240は証明されていますから,この上界は正確な値に近い線をいっています.

 最大接吻数の上界は,大きなnに対して漸近的に

  (√π)/e・n^3/2・2^(n-1)/2

で与えられることが知られています.

===================================