■月運動論(その3)
【1】3体問題への取り組み
月の運動方程式は積分できないだけでなく,近似することさえむずかしいことがわかったのだが,コンピュータがなかった時代でも,月の運動を表すベキ級数近似解を求める取り組みがこつこつと続けられた.
19世紀の末にドローネーは計算に10年,検算に10年かけてフーリエ級数の形の公式を求めた.その公式には280項もあったが,1960年代,コンピュータを使って全体で3カ所の誤りが発見された.実質的には33/16となるべき代数項の係数値をうっかり23/16と誤った1カ所だけで,他の2カ所はそれから派生した重要でない誤りだったという.
ドローネー以後,月の位置の予報精度が上がったことは事実であり,ドローネーの方法は現在でも人工衛星の軌道計算に応用されている.
===================================
【2】ドローネーの月運動論(20年かけた月の研究)
海王星の発見ののち、19世紀の天文学の到達点はドローネーの「月の理論」の出版であった。この本の中でドローネーは単一の関数の形式的な解析的展開を極度の推し進めた。彼は月の経度のための級数展開について1259を超える項、緯度については1086項を計算して、彼の人生の20年を費やし、小数点以下第7位まで展開した。この異常な努力は時には嘲笑されていたにもかかわらず、ドローネーの業績は天文台でなされた観測の正確さや解析的手法の正確さに関して費やされた象徴的なものであった。
===================================