■直観幾何学研究会2026(その2)

私が発表した内容はフィボナッチ数列1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,・・・を2次曲面 z=ax^2+bxy+cy^2上の載せる方法を検討しているとき、偶然、未発見のマルコフ数の無限系列を発見したという小話である。フィボナッチ数は準指数関数的に増加するため、2次曲面に載せること自体不可能だと思われるかもしれないが、簡単な条件を設けることによって可能になる。・・・ただし、結論に至るまで用語の説明をしなければならないのであるが、そこでかなりの時間が必要になるし、実際時間を食ってしまった。

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[1]2次形式

フィボナッチ数に限らず、ある数列が2次形式上に載るための必要十分条件は、平面幾何学でいうところの中点連結定理を満たすことである。換言すれば、2次形式では中点連結定理が成り立つのである。これを数列に置き換えると、漸化式un+1=3un-un-1を満たすことと同値になる。フィボナッチ数の漸化式はun+1=un+un-1なので、フィボナッチ数を2次形式上に載せることはできない。しかし、フィボナッチ数列(あるいはリュカ数列)の奇数番目の項あるいは偶数番目の項だけを選ぶと漸化式un+1=3un-un-1が成り立っている。

[2]コンウェイのトポグラフ とマルコフのトポグラフ

F2n-1,F2n,L2n-1,L2nはコンウェイのトポグラフ上にも載せることはできるのであるが、トポグラムの規則をわずかに変えることで、P2n-1,P2n,Q2n-1,Q2nもコンウェイのトポグラフ上にも載せることはできることがわかった。これらのなかで、マルコフのトポグラフに現れているものはF2n-1, P2n-1だけである。

[3]マルコフツリ−

マルコフのトポグラフはマルコフツリ−の名前でよく知られている。マルコフツリ−にはx^2+y^2+z^2=3xyzを満たすように各数値が配列されているのであるが、そこに出現する数は

{F2n-1}

{P2n-1}

{F2n-1}かつ{P2n-1}

non{F2n-1}かつnon{P2n-1}の4種類である。単純素朴な疑問として{F2n},{P2n}も表れてしかるべきではなかろうか?

[4]忘却のマルコフ数

単純素朴な疑問として{F2n},{P2n}も表れてしかるべきではなかろうか? このような観点からマルコフ数を探してみると、ほとんど何の苦労もなく、これまで150年間見つかっていなかったマルコフ数が見つかった。ただし、出現するのは

{F2n}

{P2n}の2種類だけで、

{F2n}かつ{P2n}

non{F2n}かつnon{P2n}はなかった。

{F2n}と{P2n}に共通するマルコフ方程式はx^2+y^2-z^2=3xyzであるが、負数が現れてくる。これが好ましくない場合は、{F2n}に対応するマルコフ方程式をx^2+y^2+z^2=3xyz+2、{P2n}に対応するマルコフ方程式をx^2+y^2+z^2=3xyz+8とすればよいことになる。

これらはSL(2,z)のコーン行列ではなく、GL(2,z)に属し、コーン行列の代数的な関係式をおおよそ満足させることも阿部隆二先生(東京工芸大学)により確認されている。

[5]もっと単純素朴な疑問

フィボナッチ数列・ペル数列以外の数列がマルコフ数に紛れ込んでくることはないのだろうか?

x^2+y^2+z^2=3xyzまたはx^2+y^2-z^2=3xyzを満たすためには、初期値が1のフィボナッチ数列・ペル数列に限られることが証明される。

[6]一般化されたマルコフ数

これまでx^2+y^2+z^2=axyz+bを満足させるような一般化されたマルコフ数を扱った論文はあるが、それらは単にディオファントス方程式としての扱いがなされているだけであって、無理数の近似精度や収束速度と関係しているものではない。上記は無理数の近似精度や収束速度との関係が明らかであって、3を集積点とする数列になっている。その意味で今回の発表は阿部先生にも参加していただき、一番聞いてもらいたかった安富先生(名古屋大学)に拝聴していただけて、おもしろい結果であるといって言っていただけたことが収穫であった。

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